腎臓リハビリテーション

透析は“長生き時代”へ

厚生労働省の平成29年簡易生命表によれば、日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳と報告されており、日本は世界有数の長寿国として知られています(図)。では、透析患者さんはどうでしょうか?

日本透析医学会の統計調査によれば、2017年に新規透析導入となった患者さんの平均年齢は70歳と報告されています。さらに5歳刻みで層別した人口分布では、男性では75-79歳、女性では80-84歳のグループが最も高い割合を示しました。

今日の日本の高い透析技術を考慮すれば、透析患者さんは“平均寿命よりも長生き”するわけです。つまり、透析医療は“いかに元気に、楽しく年を重ねていくか”ということを真剣に考えいく必要があります。

3人に1人以上がフレイル

Kojima G. Int Urol Nephrol. 2017

フレイルとは、「高齢者によくみられる症候群であり、環境因子に対する脆弱性が高まった状態」と考えられています。

フレイルの判定基準を以下の表にお示しします。フレイルを有する方は、近い将来、認知症や要介護になる可能性が高いといえます。

透析のない日に4000歩

家の中で横になっていたり、椅子やソファに座って動かないことが続くのは、身体的にも精神的にも良くありません。そんな運動不足を解消するため、ゆっくりでも構いませんので、透析のない日に4000歩の活動を心掛けて下さい。4000歩の活動量を確保するのが難しい場合には、1日10分の散歩を取り入れるだけでも効果があります。

まずは、日頃、どの程度の活動量を確保できているのか歩数計を使用して把握するところから始めて下さい。

フレイルは運動で良くなる?

2016年に運動療法が透析患者さんの歩行能力や脚力改善に効果的であるという研究結果が報告されました。これはイタリアの13施設が共同で行った無作為化比較試験※です。透析患者さんにウォーキングを指導したもので、運動に参加した患者さん(運動参加群)の6分間歩行距離(6分間で何m歩くことができるか)、5回立ち座り時間(椅子からの立ち座り動作5回に何秒かかるか)は運動に参加していない患者さん(運動非参加群)よりも改善が認められたとのことです(図)。

椅子からの立ち座り運動

椅子からの立ち座り運動は脚力を落とさないための効果的な運動様式です。手を使わないで実施することが理想的であり、椅子から立ち上がる動作、座り込む動作をゆっくりと実施します。1日5-10回程度から始めて、徐々に回数を増やすように心掛けてください。ポイントは1セット(立ち上がり-座り込み)毎に休憩をしっかりとり、息切れが起きないように注意して実施することです。もし、手を使わないと動作実施が難しい場合には、手を膝の上についても構いません。あるいは、椅子の高さを上げて実施してみて下さい。手すり等をつかんで行う立ち座り運動は腕の力に頼ってしまうためあまり推奨されません。

当院フレイル予防の取り組み

フレイル予防には定期的にチェックを実施することが必要不可欠です。当クリニックでは、理学療法士が透析患者さんのフレイルチェックを下図の流れに沿って実施しています(写真)。具体的なチェック項目は以下の表の通りです。